2009年10月
2009年10月26日
おめでとうHTV
不景気な話ばかりの昨今ではありますがおめでたいニュースが飛び込んできました。三菱電機さんが米オービタルサイエンス社から、NASAの宇宙貨物輸送機用近傍接近システムを受注との報せ。大変素晴らしい。
平たく言うと、HTVがISSにドッキングするさいに使われている通信システムがアメリカの次世代宇宙輸送機にも使われることになった、というニュースです。9機分約60億円とのこと。
日本の宇宙開発における重大な欠点(の一つ)、それは「もうからない」こと。民間にて超小型衛星なんてものが出てきても、実際に衛星やロケットを発注してくれるのは政府機関だけ。その数も衛星が1年に1~2機のペース。いくらお客様とはいえ、製造にもの凄い手間のかかる宇宙用の高級部品を年に1個とか発注されても、それは会社の規模によっては、まったくメリットのない取引です(むしろ赤字)。現実に宇宙開発なんかやってられるか!と脱退してしまうメーカが増えており、これは現在、深刻な問題であるのです。
それでもここ数年、これまで培ってきたノウハウが認められ、海外から日本製宇宙部品/衛星がようやっと売れるようになってきましたが、中でも今回のHTV近傍接近システムの受注は大きな意味のある取引だと思います。HTVのドッキングシステムというのは現在実用化されてるISSドッキングシステムの中で、(アメリカですら持っていない)唯一のロシアと別系統のシステム。商売的にこれは大変大きいカードであるのですから。
さて、当のHTV初号機は10月30日にISSより分離、11月初旬に大気圏に突入するとのこと。当然日本からは見ることが出来ませんが、せめて中継してくれることを願うばかりです。
2009年10月13日
もうすこしHTV
ちょっと身の回りが落ち着いたので更新。
今更だけどHTV。初物のロケットで初物の宇宙機、そして世界初のロボットアームによるドッキング。そしてこのドッキングの成否にISSの将来がかかっているといっても過言ではない(かも)という重大なミッションでしたが、あぶなげないスマートな運用で見事ISSへの接舷を果たしました。凄いカッコイイ写真が一杯出ているのでみんな見ておくといいです。NASAのサイトはこちら→■
これとか→■
これとか→■
これとか→■
涙が出そうです。
今回、初打ち上げとなる新型ロケットH-IIBは、とても高い精度でHTVの軌道投入を果たし、HTVはHTVで、非常時の緊急離脱を一度も行わなかったため、推薬もたっぷり余ってしまう順調振り(HTVには3回緊急離脱が可能な推薬が積まれています)。ISSへの接近時にスラスタの加熱現象もあったわけですが、これは初号機ということでドッキング前に緊急離脱デモンストレーションを行ってスラスタを酷使したから(NHKの特番ではその辺触れられていませんでしたね)。それでもスラスタはA系B系二系統あるので片方が死んでもミッションは達成できるのですけどね。
とにもかくにもHTVはロボットアームを利用したドッキングを成功させ今後のISS利用に新しい道を付けました。ただ、報道各局が述べている通り、大型貨物はHTVでしか輸送することが出来ず、日本がISSの生命線の一本を握ったことは確かです。しかしながらHTVにコレほどのスポットライトが当たるそもそもの原因はアメリカがスペースシャトルの後継機の開発にことごとく失敗し、自らの手札を自分のミスで失ってしまったからであり、決してNASAが自ら進んで日本にもISS維持の一翼を担わせようとしていたわけではないことは、頭に入れておかなければなりません。
んで、NHKでもHTVの特番も組まれていましたね。テレビで見ると同じ動画でもストレス無くていいなー、という話は置いておいて。ちょっと気になったのが番組中の有人宇宙飛行についてのコメント。的川さんが「有人はお金がかかるという先入観がある」というコメントを述べると、アナウンサーが「宇宙開発は莫大な経費がかかるんでしょう」という無茶振り。実のところはですね、JAXAの予算はNHKの三分の一しかないのですよ・・・うう~ん。