2009年11月

2009年11月28日

イトカワ沖海戦から四年

Dairy070123
 

その瞬間を誰もが待ち望んでいた。

小惑星探査機「はやぶさ」は、ついにイトカワに舞い降りた。

たった三発の弾丸、足りない燃料、迫る帰還ウインドウ、がたつく体、友との別れ、険しい地形、その立ちふさがる障害の全て打ち砕き、彼女は自らの存在を歴史に刻み込んだ。

あの熱狂は過去のものとなり、彼女の冒険ももうすぐ終わりを告げる。しかし3億キロ離れたあの星に彼女の足跡は半永久的に残り続ける。それはあの瞬間、たしかに存在した21世紀の冒険の証なのだ。

--現代萌衛星図鑑 P103より抜粋--

あの世界中の宇宙ファンをも巻き込んだイトカワ沖海戦から4年が経ちました。2005年11月26日、小惑星探査機「はやぶさ」は小惑星イトカワへの2回目のサンプル採取ミッションを実施。立ちふさがる障害を乗り越えて見事タッチダウンを果たしました。しかし喜びも束の間、イトカワを離脱した「はやぶさ」はそのまま通信を絶ってしまいます。体から漏れた燃料が噴きだし、姿勢が保てなくなったのです。4年前の今日、11月28日は通信途絶しセーフモードに入っているであろう彼女との交信を再開しようと、運用チームによる必死の運用が行われている最中でした。

当時のプレスリリース

【「はやぶさ」のいちばん長い日】

http://www.isas.jaxa.jp/j/snews/2005/1128.shtml

翌29日には運用チームは「はやぶさ」との交信再開に成功しますが、12月9日には推進剤漏れによる姿勢変動が再発。2度目の通信途絶は翌2006年の1月まで1ヶ月、さらにそこから彼女の姿勢を安定させデータのやりとりが可能になるまでさらに1ヶ月以上も彼女と運用チームの戦いは続きます。この時帰還軌道に乗れなかった「はやぶさ」は2007年帰還をあきらめざるえなくなり、彼女は想定よりも3年も長い旅路を強いられることになるのです。

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さてさて、そろそろコミケ向け締め切りが危険水域に入ってまいりました。ぎりぎり余裕があるウチにお礼とご案内を。

はやぶさのニュースが報道されて以来の沢山のアクセス、ありがとうございます。同人誌はアキバblogさまにもご紹介頂きました。いつもお世話になっております。それと今回は恐れ多くもホリエモンこと堀江貴文さまから現代萌衛星図鑑の書評を頂きました。重ねてありがとうございます。

あきばblogさま

http://blog.livedoor.jp/geek/archives/50940012.html

・六本木で働いていた元社長のアメブロさま

http://ameblo.jp/takapon-jp/entry-10397344256.html

最後に衛星擬人化本の在庫について。

現代萌衛星図鑑:在庫品薄でご迷惑をおかけしております。在庫補充まで少々お待ちください。amazonさん以外の書店さんの通販はわりかし在庫あるようです。

衛星擬人化同人誌:comicZINさまでの通販取り扱い分は終了。店頭分は少しあるかもしれません。手元に在庫はありますので、年末のコミケ、来年のコミティアなどでお手に取って頂くことも可能です。

以上、取り急ぎの修羅場前更新でした。

冬コミは、かぐや衛星本になります。

それでは!ノシ



shikishima_ld at 07:05|PermalinkComments(0)お知らせ | はやぶさ

2009年11月21日

こんなこともあろうかと・・・

掲示板で教えて頂きました。ありがとうございます。良くできてると思いますし、出だしでブワワッっと来てしまいますけど、一方で随分とストーリーをはしょっているのでちょと勿体ないとも思ってしまいます。すこしだけ補足の解説を書いてみました。

「はやぶさ」がイトカワにタッチダウンを行った直後、様々なトラブルが起きました。そのたたみかけるようなトラブルと、それをけなげに乗り越える「はやぶさ」のストーリーはミッションの中でもとても面白い部分なのですが、なにぶん量が多すぎて書ききれるものではありません。何点かを抜粋して復旧に至る経緯を解説してみようと思います。

・次の問にこたえなさい

まずは下のイラスト、姿勢制御エンジンの全損について。まず基本として「はやぶさ」には2種類のエンジン/燃料が積まれていることを知らなければいけません。メインエンジンであるイオンエンジンの他に、体を取り巻くように12基の姿勢制御エンジンが着いてるのです。イオンエンジンが車のアクセルとするのなら、姿勢制御エンジンは探査機の向きを変えるハンドルに相当します(本当はもう一個ハンドル(リアクションホイール)が着いているのですが、それはすでに駄目になっています)。

この姿勢制御エンジン群がイトカワへの不時着と前後して燃料漏れを起こし全滅してしまいます。このトラブルにより「はやぶさ」は向きを変えることが出来なくなってしまいました。イオンエンジンは生き残っているモノの、これは体の重心を貫くように配置されているのでこれをいくら噴かしても前に進むだけなのです。そこで編み出された運用チームの回答が下のカット。つまりイオンエンジン中和機からの生ガス噴射でした。この中和器は「はやぶさ」の重心に沿うようには取り付けられていないので、中和器からガスを出せば当然体のバランスが崩れ、向きを変えることが出来ます。この現象を利用したのです。

091121

※ごめんなさい↑解説大きい奴→

この生ガス噴射走法は「はやぶさ」の地球帰還への可能性を大きく広げましたが、姿勢制御エンジンの全滅の原因となった燃料漏れは深刻な問題を「はやぶさ」にもたらしていました。体の中に漏れた燃料は、体内で気化し発生したガスが体から吹き出すことで「はやぶさ」を振り回したのです。宇宙機にとってバランスを崩すというのは致命傷。まず太陽電池を太陽に向けられなくなるので電力を得られず餓死してしまう危険、そして体の向きが変わればアンテナの向きが変わり地球との交信も出来なくなります。通信が不能になり、発電が出来なくなり、さらにバッテリーを全て使い果たしたとき、宇宙機は死んでしまうのです。

しかし燃料ガスの気化が落ち着くまでどうにもできません。ガスの吹き出す力を、自分の体が振り回されるのを「はやぶさ」自身では止めることが出来ないのです。「はやぶさ」は味噌すり運動と呼ばれるスピンに入っており、通信も太陽光による発電も出来ない状態に陥り、とうとう消息を絶ちました。ついに待つことしか、祈ることしか出来なくなりました。

その危機を救ったのも実は「はやぶさ」の設計でした。燃料ガスの気化が治まっても、スピンが停まるわけではありません。しかし「はやぶさ」は回転していても、体を縦に貫く軸を中心に回転するようにバランスされている設計。ガスが噴く間は頭を右に左と振り回されますが、それが止まれば、あとは体のバランス配分が生きてきます。味噌すり運動は日に日に落ち着き、ついには地球と同じような一本軸を通った素直な回転に落ち着きます。そしてブレを止めた体の軸は、見事に地球を自らの通信アンテナの交信域に納めました。孤立無援、地球との通信さえ出来ない状況化で、「はやぶさ」は三ヶ月にわたる死闘の末、遂に地球との通信を再開したのでした。めでたしめでたし。

見事通信は回復、はやぶさは生還を果たしたわけですが、一連のトラブルにより、バッテリーが全損し、電源断によりメモリーに溜められていた記憶をも失い、体の中にはまだ漏れた燃料が残っていて爆発の可能性すらもあるのですが、それはまたまた別の話で。

「はやぶさ」はトラブルの度に不死鳥のように復活するそのロバスト性の高さは素晴らしいと思います。そして同時に、このトラブルの大元となった原因。つまり”他天体への不時着が原因でトラブルを起こした”という事実もまた、素晴らしいと思うのです。


shikishima_ld at 21:59|PermalinkComments(8)はやぶさ | 人工衛星

2009年11月20日

ハヤブサハ未ダ沈マズ

遂にといいますか、それともやっぱりといいますか、良いニュースが飛び込んできました。今月4日にスラスタのトラブルから加速を停止した「はやぶさ」がスラスタ復旧に成功。再び地球への加速を再開したとのこと。

まだまだ予断を許さない状況であるとは思いますが、来年の三月下旬まで現状が維持できれば六月の地球帰還が可能だそうです。

えー、状況をまとめましょう。

1)イオンエンジンのこと

そもそも「はやぶさ」のメインエンジンであるイオンエンジン(スラスタ)は、推進剤であるキセノンをイオン化しこれを電気で押し出して進む仕組み。ただこの時プラスイオンだけを放出してしまうと良くないので、それを中和するための中和器がセットでくっついています(こっからも少量のキセノンガスが出ます)。んでこの中和器は長く使っていると駄目になってしまいます、つまりこれがスラスタの寿命を左右するわけですね。

2)コレまでのあらすじ

2009年10月末の時点ではABCD4基あるエンジンは

A:打ち上げ当初から調子よくないのでほぼ未使用

B:劣化して使用停止

C:使用中(ただし劣化して出力低下)

D:使用中(ただし劣化して出力低下)

と言う状態でした。

それが11月4日にスラスタDまで停まってしまい、生きているスラスタはCのみになってしまいました一基のスラスタでは必要な加速を得るのが難しいばかりか、これまで以上にCを酷使することになるので、とうてい地球に着くまでスラスタが持つはずがなく、それ故に地球帰還の可能性が危ぶまれていたのです。

3)対策

さて、「はやぶさ」の再加速を可能にしたのはイオンエンジンのクロス運転と呼ばれる手法でした。これは現在まで未使用でありほぼ新品に近いスラスタAの中和器と、スラスタBのイオン源を同時に使用することで一基のエンジンの様に使おうという試みです。えっそんなのあり?と言いたくもなりますが、中和器は必ずしも同じスラスタからでなくとも、とりあえず噴いていればいいのだそうです。しかもこうした事態を想定して設計時にあらかじめ回路を組んでいたと言いますからダブルで驚かされます。

091120

4)問題点と今後

起死回生のアイデアではありますが、これはこれで問題が無いわけではありません。発生する推力はスラスタ一基分、とは言っても使わないAのスラスタからもキセノンガスが出てしまいますし、これまた寿命を迎えたBの中和器からもガスが出てしまいます。もちろん電気も喰います。つまり得られる出力はスラスタ1基分であっても、消費する電力と推進剤は2基分必要になってしまうのです。地球帰還までに必要とされるキセノンの量は5kg。幸い「はやぶさ」はまだ20kgのキセノンを抱えていますし、消費電力面では「はやぶさ」が太陽に近づきつつあることから、推薬/電力共にクリアできているとのことです。

ABクロス運転で発生する推力はわずかに6.5mN(一円玉も持ち上げられない)。「はやぶさ」が地球に帰り着く為には、このささやかな推力をもって200m/s強の加速を、来年三月までに行うことが必要です。

以上、取り急ぎ解説などしてみました。

11月19日現在、「はやぶさ」と地球との距離は136,612,320kmです。

<参考リンク>

・小惑星探査機「はやぶさ」の帰還運用の再開について(JAXA)

http://www.jaxa.jp/press/2009/11/20091119_hayabusa_j.html

はやぶさ、帰還に向けてイオンエンジン再起動(松浦晋也のL/D)

http://smatsu.air-nifty.com/lbyd/2009/11/post-1cd1.html

・小惑星探査機「はやぶさ」が地球への帰還を再開(Robotwatch)

http://robot.watch.impress.co.jp/docs/news/20091120_330425.html



shikishima_ld at 12:30|PermalinkComments(1)はやぶさ 

2009年11月18日

COMITIA90 ありがとうございました

Comitia90と、既刊同人誌の通販について


http://teardrop.weblogs.jp/10/2009/11/comitia90-ありがとうございました.html

shikishima_ld at 02:05|Permalinkお知らせ 

2009年11月15日

COMITIA90の対応について

とりいそぎ週末のコミティアについてご案内申し上げます。

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2009年11月15日(日) 東京ビッグサイト

Comitia90 西1ホール

ふ14b:「teardrop」

【だしもの】

新刊ナシ

-既刊-
・人工衛星擬人化本「Orbitalpretty6.7」:「かぐや」衛星後編(速報版)※コピー

-既刊-
・人工衛星擬人化本「Orbitalpretty6.0」:「かぐや」衛星前編
・人工衛星擬人化本「Orbitalpretty5.0」:小惑星探査機「ミネルヴァ」

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※「かぐや(コピー)」:あまり数ありません。冬コミ以降はオフセに切り替わります。
※「かぐや(既)」「ミネルヴァ」:事故がなければ十分に数有ります。

では皆様、会場でお待ちしております。



shikishima_ld at 00:22|PermalinkComments(0)
絵を描いたりします。コミケとコミティアと筑波と相模原が出現ポイントです。 単行本/同人誌のご感想、その他ご連絡に関しては下(↓)のメッセージフォームまでお願いします。
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