2011年03月

2011年03月01日

宇宙世紀の一枚

どうもこんにちは。宇宙関係では微笑ましいニュースが続いています。

110223 HTV2のドッキング成功を皮切りにESAのATV-2、そして今年で26歳にもなろうかというスペースシャトル「ディスカバリー」が立て続けにISS(国際宇宙ステーション)へのドッキングを行いました。これで現在のISSには合計6隻の宇宙船が係留されていることになります。これほどの数の宇宙船が一堂に会するのは宇宙開発史上最初で最後でしょう。

この血のたぎりを皆さんと分かち合いたかったのですが、どこにも完全な解説図が無くて、色々な広報素材を切った貼ったして作ってみました。あくまで参考で資料的価値はありません(とりあえずtwitpicにupしたバージョンからご指摘頂いた部分を修正しました)。

 これほどのシチュエーションですし、もちろん撮影に向けた検討も行われているようで、6隻のうち1隻(図の24S)を分離させて行う予定とのこと。

110301a ちょっとだけ説明をしますと、ISSはこの図の左から右へ向かって飛びます。つまりHTV側が船首、ATV側が船尾になります。ATVがエンジン噴射でISSの軌道を押し上げることが出来るという理由がこの図をみれば何となく理解して頂けると思います。


110301b ついでにもうひとつ。このISSの船首に位置しているのは、ヨーロッパの「コロンバス」モジュールと、日本の「きぼう」モジュールです。船首方向はデブリが良く飛んでくる上に無重力実験場としてあまり条件が良くない、いわば地価が低い場所。安くない金を払って研究施設を作ったのになんでこんな場所に追いやられているんだというのが、実は建設開始当時の各国の力関係を象徴していたりします。どんなに言葉の上で「対等なパートナー」と言ったところで技術が無ければいつまで経ってもこうした扱いから抜け出ることは出来ません。

ISSは世界15ヶ国が協力して運営、建設をすすめている巨大施設です。おおざっぱに分ければアメリカ・ロシア・ヨーロッパ・日本がそれぞれに持ち寄ったモジュールとカナダが製作した大型ロボットアームの集合体であり、さらにここに各国が建造した5種類の宇宙船が往来します。その10年以上に渡る建設運営に当たり、ISSの中には各国の安全基準や、様々な工業規格(ドッキングポートの形から、ケーブルの端子から、スイッチの向き、飛行士の訓練まで)が、調整、整理されて存在しています。つまりはこの船は世界各国の習慣や技術や人間そのものが宇宙という極限状態の中で凝縮された一種のミニ地球。宇宙実験施設であるISSですがそれは工学実験にとどまらず、同時に国境を越えた次世代の安全保障の実験場でもあるのです。

凄く面白い題材ではあるのですが、なかなかその魅力が伝わらず、どこでも扱いが低いのですよねえ・・・。

 

※追記

紹介の仕方が乱暴で済みませんが、NASA公開のISSの現在の宇宙船結合状態の写真を何枚か。

1・ATV2とソユーズとプログレス。三隻そろい踏み。
http://www.nasa.gov/images/content/520884main_iss026e029296_full.jpg

2・ シャトルドッキングのためによいしょよいしょと場所を空けるHTV2
http://www.nasa.gov/images/content/519969main_iss026e028076_full.jpg

3・ 主役は最後に登場!引退フライトを迎えた「ディスカバリー」最後のドッキング。
http://www.nasa.gov/images/content/521347main_iss026e030179_full.jpg 

4・ISSに寄り添って、アームで掴んでもらうのをじっと待つHTV2。これはJAXAのサイトから
http://issstream.tksc.jaxa.jp/iss/photo/iss026e020990.jpg

 5・HTVもっと大きいの。再びNASAのサイトから
http://spaceflight.nasa.gov/gallery/images/station/crew-26/hires/iss026e020917.jpg

6・シャトルのうろこのアップ。愛情たっぷりのメンテがされているとはいえやっぱり大ベテランの風格が漂います。
http://spaceflight.nasa.gov/gallery/images/station/crew-26/hires/iss026e030066.jpg

7・そして最後にわれらがISS。HTVは反対側に引っ越したのでこちらからは見えません。
http://spaceflight.nasa.gov/gallery/images/station/crew-26/hires/s133e006859.jpg

 

 



shikishima_ld at 16:53|PermalinkComments(3)HTV | あれこれ

HTV2号機、暴露部搭載物の移設を完了


110211b HTVのドッキングに合わせての更新のつもりでしたがすっかり時機を逸してしまいました。ごきげんよう。さてあれよあれよというまにトラブルらしいトラブルも起きず順調にISSへドッキングしたHTV。今日はそのドッキングについての解説など。

・HTVは何故自動ドッキングを捨てたのか?

HTVが実証したキャプチャ・バーシング方式、それはつまり専用のドッキング機構を持たず、ISSのすぐそばを飛びながら、アームで掴んでもらうという方式。計画開始当初、NASAからして「そんなもん出来てたまるか」と言われていた技術でありました。しかしなんでまたHTVはNASAから反対されながらもその方式にこだわったのでしょうか。

これまでISSへドッキングするためにはAPASという自動ドッキングシステムが使われておりました。このAPASとはロシアが開発した信頼性の高いシステムで、無人宇宙船による自動ドッキングも可能な素晴らしいものです。スペースシャトルもこのAPASを使用しています。しかしこの素晴らしいAPASはこれはこれでデメリットもありました。まず宇宙船同士が同じ軌道を通り、緩やかながらもゴツンと宇宙船同士がぶつかり合うわけで、この衝撃型ドッキングと呼ばれる方式は潜在的に危険性があること。そして有名な「出入り口が狭いこと」

110122b対してHTVの「キャプチャバーシング方式(以下C/B方式)」は、お互いが同一軌道を飛ばないので「安全」「出入り口が広くとれる」という特徴をもっています。C/B方式の利点はコスト面にも現れます。APASの高価なドッキングシステムを使わないことで宇宙船自体のコストも押さえられますし、自動ドッキング、つまり衝撃型ドッキングを使わないということは、船体に余分な力がかからないことから船体を軽く作ることが可能となります。HTVが側面に大きな開口部を開けることが出来たのもC/B方式ならではのメリットです。

そしてもう一つ語っておかなければならないのが、技術的な独立性です。ISSへのドッキングシステムはロシアのAPASしかない。それはつまりドッキングしたければ毎回毎々ロシアにお金を払ってパテントを買わなければならず、ロシアが首を横に振れば、ISSへのドッキングが不可能となってしまうことです。ランデブードッキング技術とは宇宙活動では欠かすことの出来ない技術です。HTVではこの技術を独自開発することで、海外から干渉される可能性を減らしています。

もちろん独自開発には他にもとても良いことがあります。無人機のドッキング技術はアメリカですら持っていません。つまりISSにドッキングするにはロシアか日本のシステムを買わなければならないと言うことです。HTV1が無事にドッキングを成功させたことで、HTVのシステムがアメリカの民間宇宙船に採用され、9機分60億円の受注があったことは記憶にあたらしいです。またシステムばかりではなく、アメリカからは、有償での日本スタッフによる米宇宙船の運用支援と訓練支援も打診されています。日本では、「自分でやらなくても海外から輸入すれば云々~」という論調は見られますが、首根っこの技術を他国に依存してしまえば骨の髄までしゃぶられます。逆もまたしかり。

NASAからも頼られるほどの存在になったHTV、しかしそれは今日突然出来上がった物ではありません。HTVのドッキング技術は、97年に打上げられた技術試験衛星きく7号こと「おりひめ・ひこぼし」の経験が基礎となっています。1990年代前半にタネを蒔いた技術が芽が出て収穫するまでに15年以上かかっているのです。

 

 

 

 

 



shikishima_ld at 02:09|PermalinkComments(0)HTV | こうのとり
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