人工衛星

2014年05月24日

「だいち2」本日打上げ

本日、5月24日12時5分。陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS-2)の打上げが行われます。正午打ち上げの人工衛星というのはとても珍しく、また週末と言うことで全国各地で打上げに関するイベントが行われるようです。しきしまは宇宙研会場でみるつもり。

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20140524_Alos2地球観測衛星はさまざまな種類がありますが、「だいち2」は大型の合成開口レーダーを用いて地表を三次元スキャンしていくのが特徴。つまり「だいち2」は地球を丸ごとの三次元立体をつくることが可能です。

人工衛星の合成開口レーダによる地表探査、その特徴は全地球レベルでなおかつ何年分も蓄積した圧倒的なデータライブラリにあります。

見過ごされがちなことですが、衛星による地表探査は一度きりではありません。「だいち2」は16日で地球全土を観測できる軌道を飛び、5年ほど活動を続けます。その間に取得した地表データはたった1回分のデータであっても様々な恩恵をもたらしますが、これらのデータを何年分も重ね合わせ加減乗除様々な加工することで絶大な威力を発揮します。

例えば飛行機を飛ばすことすら難儀な絶海の孤島の火山活動を「精密」に「定期的に」「安く」「安全」に探査することが出来ます。たとえ火口が噴煙に覆われていても「だいち2」の合成開口レーダであれば噴煙の下の火口の形状を詳細に把握することが出来るのです。

さらには広大な飛行場。地盤沈下に悩む海上に建設された巨大な空港も「だいち2」であればその沈下がひと目で分かり、老朽化が問題となっている日本全国の社会インフラのメンテナンスにも大きく役に立てるのです。

そしてアマゾンの森林伐採。過去に得られた密林のデータを重ね合わせることで森の中の違法伐採道路の様子も分かります。年中雨期で雲が多く、光学カメラを積んだ偵察衛星では観測できない雲の下を「だいち2」の合成開口レーダは見通すことが出来るのです。

我々が昨今お世話になっているハザードマップなどはまさにこうした地表観測データの恩恵によるものです。


3年前までその重要な任務を背負っていたのが先代の「だいち」衛星でした。初代「だいち」は2006年から運用が始まり、東日本大震災ではその大きな地殻変動を捉えることに成功しましたが、震災からわずか二ヶ月後に機能を停止してしまいます。「だいち」は設計寿命を大幅に超えて活動をつづけていましたからその停止に非があるわけではないのですが、すぐに新しい衛星を用意できる状況に無かった日本は、この事故によって大きくダメージを受けてしまいます。以降、緊急時には他国の衛星からデータを買うことになり、衛星による国土観測は大幅に停滞してしまいました。

前述したとおり衛星の観測データは蓄積してナンボ。歯抜けの実験データに意味が無いように、本来であればレーダー観測が三年にもわたって途切れてしまうことは望ましいことではありません。

そこで後継機「だいち2」の登場です。「だいち2」は初代「だいち」衛星喪失後、補正予算の充当などで最優先、急ピッチで開発が進められ、いよいよ今日打上げられるまでになりました。
震災から三年、ようやく軌道上に返り咲く日本の地球観測衛星。「だいち2」が眺める日本の姿はどの様なものでしょうか。三年のギャップがとても悲しくはあり、今はとても楽しみであるのです。

「だいち2」のミッション成功を心よりお祈り申し上げます。

 

・「だいち2」打上げに関する情報はこちらからどうぞ↓

-「だいち2」打上げ特設サイト-



shikishima_ld at 00:03|PermalinkComments(0)

2012年05月18日

【速報】H-IIA_21号機打上げ成功

2012年5月18日01時39分に打上げられたH-IIA_21号機の打上げは成功しました。「しずく」衛星は分離後に太陽電池パドルを展開、太陽追尾を開始したことが確認されています。詳しい情報や分離写真の衛星からのダウンロードはお昼過ぎになるようです。

--<参考リンク>---

第一期水循環変動観測衛星「しずく」(GCOM-W1)の太陽電池パドルの展開及び太陽追尾状況の結果について

 



shikishima_ld at 10:19|PermalinkComments(0)

2010年09月27日

ぼく達の頭上にぼく達のホシを

100921  なんとなく描いていた落書きが仕上がったタイミングで準天頂衛星初号機「みちびき」が準天頂軌道に投入されたとのニュースが入ってきました。いよいよ衛星として独り立ちですね。おめでとう。

「みちびき」が打上げられたのは9月11日。2週間かけてようやく自分の軌道に入ったことになります。例えば「いぶき」や「だいち」、その他偵察衛星など、地球を観測する衛星は高度数百キロという低い軌道を飛びます。この場合、ロケットで直接その軌道に送り届けてくれます。一方で気象衛星や「みちびき」のような高あああい軌道(高度数万キロ)の場合、ロケットだけでは持ち上げることができず、衛星自体がえっちらおっちら昇って行かなくてはならないのです。と、いうわけで今日から「みちびき」は一日のうち約8時間、日本の何となく真上に位置し、今後10年間にわたり我々を見守り続けてくれることになります。

準天頂衛星「みちびき」の話。・・・とはいったものの、この衛星を説明するのはなかなかに難しいです。一言で言えば「みちびき」は日本の真上に位置する日本専用のGPS衛星。いやいやこの呼び方は誤解を呼ぶな。常に日本の上空に位置しアメリカのGPS衛星だけでは不足がちな信号を補うための補強/補完信号を出してくれるありがたい衛星とでもいえばいいのか。

※GPS補完:米GPS衛星と同じ信号を出すことで、
                   国内の利用時間利用エリアを拡大させること。
 
※GPS補強:米GPS衛星の信号に誤差情報を乗せて、GPSを
                   より高い精度で使うこと。

この「みちびき」の良いところとよく言われるのが「カーナビの精度が良くなる」ですね。実際はそんな単純なものでは無く、正確に言えば「これまでよりも一桁上の精度で自分の位置を調べられるようになる」ということです。この恩恵ははかりしれません。これまでカーナビレベルの精度では使えなかった産業にも衛星測位が使えるようになるのですから。例えばロボットによる自動運転(輸送カートやトラクター)。ロボットによる海洋探査、海底地震計などの防災用途から、はてや迷子札や携帯ナビまで多岐にわたります。将来はガスや水道と同じようなインフラとして整備されることが望まれます。

もう一つ重要なのが「電波の届かなかった所にも電波が届く」です。都市部はともかくとして山間部でのGPS受信の可否はそれこそ命を左右します。

ただし問題もないわけではありません。24時間運用するには「みちびき」が三機必要であり、その為には多額のコストがかかります。このシステムは日本だけでなくアジアやオーストラリアにも恩恵があるのですが、これらの国を安全保障の一環として抱き込めるのか、多額の費用をかけて作ったシステムに民間業者が商売として一緒に付いてきてくれるのか。国家の生命線として高いコストを払って維持していく覚悟があるのか。これらはハードでなく政治の話になりますが、むしろこれらについて明確な見通しが組めないのであれば、準天頂衛星システムを整備するべきではないでしょう。

すでに報道にあるように、「みちびき」は3機必要ですが2号機以降はまだ未定です。将来3姉妹が揃うかどうかは、お姉ちゃんのがんばり次第です。

まとめます。

--【準天頂衛星まとめ】--------------------------------------

・これまでの一桁上の精度での測位が出来る(GPS補強)。
・これまでよりも広いエリアでの測位が出来る(GPS補完)。
・米GPS衛星と併用してはじめて効果を発揮できる。
・24時間使うには3機が必要。

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100927  と、普段報道されていることの引き写しだけではつまらないので、もう少し主観の入った話をちょっとだけ。この子、誰かに似ていませんか?実は「みちびき」は気象衛星「ひまわり7号」の姉妹なのです(「かぐや」と答えた人は残念ながらボッシュートです)。

三菱電機の誇る衛星バス「DS-2000」が「みちびき」のプラットフォーム(車のシャーシ、パソコンのケースみたいな物)であり、この衛星バスは「きく8号」を基礎に発展を遂げてきた、日本では珍しい量産されている衛星(かつ海外に売れた唯一の衛星)であります。姉妹とちょっと違うのが太陽電池パドルが左右に分けられて二翼式になったこと。これはたとえ太陽電池が死んだとしても、残った片翼でミッションを継続できるようにとの配慮から(電源系の完全二重化)。他にも「はやぶさ」と同様にリチウムイオンバッテリーを搭載するようになったりと、細かいところで改良されているようです。

DS-2000は「みちびき」を含めて現在で4機、ひまわり8+9号での受注も内定しているので、将来は7人姉妹になる予定です。このDS-2000には聞くも涙、語るも涙の日本の宇宙開発史に残るお話しがあるのですが、いつか取材できる日が来たら是非描きたいです。

なんか久しぶりに書いたらやったら長くなりました。
 今日はこれにて~ノシ



shikishima_ld at 17:16|PermalinkComments(5)

2010年05月15日

一番星を目指す「あかつき」

★「はやぶさ」の影にすっかり隠れてしまっていますが、金星探査機「あかつき」が5月18日打上げられます。金星の気象を観測する、いわば「金星ひまわり」とも言える衛星です。あかつき探査機は、「はやぶさ」の直系には当たりませんがそれでも妹になるのかな。技術的にはそれなりに色んなところを引き継いでいるので。開発期間中にISASからJAXAへの組織改編に巻き込まれ、打上げロケットまで変わってしまったという苦労人。搭載されるメッセージの募集に際して、初音ミクを金星へのキャンペーンが一部で行われたことも記憶に新しいです。

【ニコニコ動画】[JAXA][あかつき]金星大気の謎に挑む

わたしもこの「あかつき」キャンペーンに色紙を贈らせて頂いたのですが、その記念品として「あかつき」に搭載されたプレートのレプリカを頂きました。ありがとうございます。

100423  ご存じない方に説明すると、人工衛星はバランスを取るため、全ての機器を搭載したあと「オモリ」を乗せる必要があります。せっかく使える重量をただのオモリで消費するのもつまらないので、ここにみんなで寄せ書きしたら面白かろう、というのがそもそもの始まりです。メッセージはプレート表面に顕微鏡で読めるレベルまで縮小されて印字されます。蛇足ながら、このプレートにあてられる重量は、初めからバランス取りのウエイトに当てられていたモノで、これを搭載することで探査機のペイロードが減少することはありません。

続きを読む

shikishima_ld at 09:03|PermalinkComments(0)

2010年03月04日

まずは御礼、そしてご案内

あ・・・、書けるよ・・・やっとコメントが返せるようになったみたいです。これで一安心。

 まずは御礼から。「現代萌衛星図鑑 」の4刷が決まりました!とにもかくにも皆様のお陰です、ありがとうございます。発行に際していろいろを身を砕いてくださった方々にも、これでようやく顔向けができるのかな、という心境です。書店様にはもう並んでいるのではと思います。

COMIC_ZINさまへ衛星本在庫の搬入も行いました。現在品切れであるミネルバ本とかぐや前編も近日中にお求め頂ける様になると思います。

次に、・・・このお知らせはちゃんとエントリーを書いてからしっかりとやりたかったのですが・・・。
プラモデルメーカーのアオシマ文化教材社様で小型ソーラー電力セイル実証機「IKAROS(イカロス)」の応援キャンペーンを展開されています。ちっとだけしきしまもお手伝いさせて頂きました。締め切りは3月14日、皆様、お誘い合わせの上是非に。

さてさて、この小型ソーラー電力セイル実証機「IKAROS(イカロス)」は金星探査機「あかつき」とともに打上げられる技術実証衛星です。何が凄いって、凄いんですよこの子!実証機の名が示すとおりに技術的に面白い機能を沢山持っています。

最大の特徴は、衛星自体が太陽の光を1辺13.5mにもなる大きな帆で受け止めて、帆船のように推進するしくみであることです。ソーラーセイルは理論としては古くから考えられていたものですが、薄くて大きくて軽い帆を作ることが技術的に難しく、これまで実用化が困難とされていた推進装置です。またセイルを確実に展開させるためのマストも巨大になりこれをひたすらに軽く作ることもこれまた大変ですが、イカロスでは船体を回転させその遠心力を利用する、つまりソーラーセイルをバレリーナのスカートのようにぶわっと広げることで、展開機構の問題を克服するに至りました。

そしてこのイカロスの姿勢制御は、ソーラーセイルに設置された曇りガラスの様な姿勢制御デバイスで行われるところも技術的に面白いと思います。この曇りガラスは電気のオンオフで反射率が変わる仕組みを持っていまして、太陽光をめいいっぱい受けたいときには太陽光を鏡面反射させることで光を力として受け取り、逆に力を逃がしたいときには、太陽光を拡散反射することで受け流します。このデバイスが帆の4辺にそれぞれ設置されているので、これを別個に操作することで船体の向きを変えられるのです。

あと技術的特徴ではありませんが、開発期間がわずか二年半と大変に短く、さらに低コストであることも押さえておきたいところです。いわゆる衛星バスは開発リスク低減のため、すでに実績のあるMVロケット、LUNAR-A、はやぶさ、DARTS、あかつきなどの既存部品/既開発品が流用されるなど、すでに実績のある技術の寄せ集めであっさりとまとめられており、そのコストはだいたい通常衛星の数分の1に留まっているといわれています。一方で、イカロスの重量は300kgほどもあり、じつは「あかつき」衛星のドライ重量とたいして変わらなかったりするのですが、その辺はやはりH-2Aの能力の恩恵なのでしょうね。それにしても、ついに宇宙に上がることなく人生を終えた月探査機LUNAR-Aがこの様な形で宇宙を目指すことが出来るのは、なんとも不思議な気がします。

今から20年前の1990年、日本の「ひてん」衛星は世界で初めて惑星の高層大気を利用して衛星にブレーキをかける”エアロブレーキング”に成功します。この事実は国内マスコミから完全に無視されて関係者を落胆させるのですが、当時の米ヒューズ社の社内報に「ひてん」が取り上げられ、以下のような文章が掲載されました。

この成功によりエアロブレーキはSFの世界から現実のものになった”。

2010年5月、私たちはこのミッションを通じて、太陽光推進という言葉が、SF用語からたんなる技術用語に転落する瞬間を目撃することになるのです。





shikishima_ld at 00:01|PermalinkComments(8)
絵を描いたりします。コミケとコミティアと筑波と相模原が出現ポイントです。 単行本/同人誌のご感想、その他ご連絡に関しては下(↓)のメッセージフォームまでお願いします。
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