第一期水循環変動観測衛星「しずく」

2012年05月17日

続々・「しずく」衛星打上げに向けて

H-IIA21号機打ち上げ解説、第三夜目です。今回妙にイラストが縦長です。現地ではすでにロケットが射点に据え付けられていますが、心配されていた天気も何とかなりそうですね。

【H-IIA_Flight21・ここに注目(その3)】 「白いH-IIA」

20120517b■さて今回の打ち上げの3つ目の注目点は白い試験塗装を施されたH-IIAです。H-IIAももうすぐ10歳。すっかり安定したロケットとなりましたが、世界のトップレベルを維持するためには絶え間ない改良が欠かせません。今回のフライトでは将来の改良計画に向けた予備実験としていくつかの項目が予定されています。何よりも目につくのがロケットの二段目機体が白く塗装されることです。

数年後に実用化されるH-IIA高機能型は、エンジンを一端止めて再点火したり、ユルユルと長く燃焼させることで、より高い軌道に衛星を打ち上げることを目指しています。その為に蒸発しやすい液体酸素や液体水素の燃料タンクを断熱して、これらの推進剤が蒸発によって浪費されるのを防がねばなりません。21号機ではタンクの表面を白く塗装して外壁の温度条件の変化が推進剤の蒸発速度にどのような影響を及ぼすのかを試験します。

【H-IIA_Flight21・ここに注目(その4)】 「の商業打上げ」

20120517■そしてこの打ち上げの最後のポイント。それはこの21号機には初めて海外の衛星が”お客様”として乗っていることです。H-IIAは今回初めて”商売”として打ち上げを行います。これは日本の宇宙開発史上の悲願であった商業衛星打上げ第一号となります。

H-IIAは力持ちなので「しずく」を打上げるだけならまだまだ余裕があります。そこで「しずく」の頭の上に席をもう一つ作ってそこにお客さんに乗ってもらうのです(それでも余裕があるので小さな衛星がさらに2機乗っています)。

”信頼”と”実績”が重要視される宇宙業界に於いて日本は商業打ち上げ実績が皆無であり、これまで世界の衛星ユーザーから相手にされてきませんでした。しかし今回初めて韓国の衛星が第一号として乗り込むことになったのです。ぶっちゃけて言えば今回の打ち上げは金銭的な儲けにはなりませんが、実績”ゼロ”の日本にとって、この打ち上げは将来に向けた大きな一歩なのです。

第一期水循環変動観測衛星「しずく」打上げは
5月18日(金)01時39分
を予定しています。

以上解説終わり。

 

21号機打上げ成功をお祈りします。20120517

 

--参考サイト---

・しずく打ち上げ特設サイト
http://www.jaxa.jp/countdown/f21/index_j.html

【さてらいこ.jp】:「しずく」衛星打上げに向けて

【さてらいこ.jp】:続・「しずく」衛星打上げに向けて

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shikishima_ld at 17:05|PermalinkComments(0)

2012年05月16日

続・「しずく」衛星打上げに向けて

H-IIA21号機打ち上げ解説、第二回です。実は4夜に分けて解説をするつもりだったのですが、いつのまにか日程を覚え違いしていてて、気がついたら打上げが目の前でどうにも間に合いそうもありません。悔しいので本日2回目の更新です。

【H-IIA_Flight21・ここに注目(その2)】「A-Train」

20120516c■地球上では様々な自然現象が発生し、地球観測衛星は日夜その振る舞いを観察しています。例えば地球で発生する竜巻や地震火山の噴火、こうした現象を観察するときに多くのセンサで同時に観察すると様々なことが立体的に把握できます。しかし一機の衛星に観測装置を山のように積むと、加速度的にコストとリスクも増えていきます。そこでアメリカ人は考えました。沢山の人工衛星を同じ軌道に一列に並べて次から次へと同一地域を観測させればいいじゃないかと。これがA-TRAINと呼ばれる地球観測構想です。

高度690kmを飛行するこの宇宙鉄道には現在4機の衛星が加入。本当は7機になるはずだったのですが、1機は計画から離脱して、2機は打上げに失敗してお星様になりました。

「しずく」はこの衛星隊列の先頭に配置されてA-Trainの一員として国際的な共同観測任務にあたります。

 

20120516d・今回の打上げで注目すべき点の一つは、このA-Trainへの軌道投入です。「しずく」は 
まずロケットによってA-Train軌道の20km下の軌道に打上げられます。その後タイミングを見計らって上空を征くA-Trainの先頭にえいやと入り込む算段です。各衛星の間隔はわずか数分。秒速8kmで飛行する衛星による編隊飛行はこの打ち上げのもう一つのハイライトとなります。

明日はもう1人の主役、H-IIAについて。

 

 



shikishima_ld at 23:25|PermalinkComments(0)

「しずく」衛星打上げに向けて

唐突ですが今週は宇宙が熱いのです。昨日(5月15日)にはロシアのソユーズ有人宇宙船が打上げられ、そして18日には我らがJAXA、第一期水循環変動観測衛星「しずく」が打上げられます。19日にはアメリカの無人輸送船ドラゴン搭載のファルコン9ロケットが打ちあげ予定。21日は金環日食もついてきます。というわけで、今週は「しずく」打ちあげと金環日食についてぼちぼちご紹介していきたいと思います。

【H-IIA_Flight21・ここに注目(その1)】 「衛星しずく」

120516a第一期水循環変動観測衛星「しずく」は水の循環を調べる地球観測衛星です。地表の水を調べることで大気の循環がどのように成り立っているのかを把握することが出来ます。例によって「これが何の役に立つのかそんな金があれば(以下・・・)」という話が出てくるので解説しますと、地球の水分量の把握は現在の生活に無くてはならないモノです。これらのデータはエルニーニョ現象等の長期気象変動の把握、短期気象情報の精度向上に必須で、海水温度データは漁業活動に於いて広く使われています。土壌水分量の把握は日本のみならず世界中の作物の育成計画に使われますし、干ばつなどの早期警戒などにも役立てられるなど世界の食糧の安定供給にとって水循環変動観測データは無くてはならないモノなのです。

・では簡単に衛星を見ていきましょう(JAXAのサイトへ→)。衛星は2トン級の中型サイズ。「はやぶさ」の4倍といえば凄そうですが、ごく平均的なお手頃サイズといえます。観測装置は外見的にも大きな特徴であるAMSR2(高性能マイクロ波放射計2)が一つあるだけの大変シンプルな構成です。太陽電池パドルは左右に1枚ずつ配置した両翼式。「しずく」の軌道であれば片側一枚あれば事足りるのですが、衛星の生存性向上(片方のパドルが壊れても生き続けること)を狙って2枚に分散されています。最近の国産衛星の流行りですね。

衛星バスは「はやぶさ」を製作した日本電気が新たに世に送り出す汎用型2トン級低軌道衛星バス。「はやぶさ」が「軽量化のために配線のコネクタすら省略」「熟練の技術者による組み立てを前提にした機械レイアウト」など、ギリギリの設計で性能向上を狙っていたのに対して、この衛星バスは今後の量産を見越してあらゆる面に余裕があり製造時の作業性や衛星のメンテナンス性にも大きな配慮がなされています。推進系(姿勢制御エンジン)はタンクやエンジンが一つのモジュールにまとめられ、衛星からぼこんと抜き取ることが出来ます。同じ日本電気生まれながらも「しずく」は「はやぶさ」の両極に位置するキャラクターの1人と言えます。

20120516b
彼女に優れた観測能力をもたらすのが頭の上の大きなお皿。AMSR2(高性能マイクロ波放射計2)と呼ばれるこのセンサは三菱電気が世界に誇る高分解能大型センサです。アンテナ直径が2m、重量250kgという大型アンテナが1.5秒に一回というスピードで衛星が生きている限り(5年以上)回り続けます。これだけ大きいセンサなので、その反動も大きく、「しずく」ではAMSR2のトルク打ち消し用に専用のリアクションホイールを搭載して対応しています。このセンサの視野を大きく取るために「しずく」の首はキリンのように長くなりました。

 

120106a・細いアームに支えられたこのアンテナですが打上げ時には当然折りたたまれています。この2.7mもの構造物が宇宙空間で展開する様子は、この打ちあげの大きなハイライト。展開状況を把握するためにLED投光器つきのモニタリングカメラも装備されているので、美しい画像を見せてくれることでしょう。

第一期水循環変動観測衛星「しずく」打上げは5月18日(金)01時39分を予定しています。

以下、明日に続きます。

 

--参考サイト---

・しずく打ち上げ特設サイト
http://www.jaxa.jp/countdown/f21/index_j.html

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ちょっとCM:COMIC ZINさまで金星探査機「あかつき」本を解説した「Dawning Pretty」の取り扱いが始まりました。よろしくお願いします。

 

 



shikishima_ld at 08:24|PermalinkComments(2)
絵を描いたりします。コミケとコミティアと筑波と相模原が出現ポイントです。 単行本/同人誌のご感想、その他ご連絡に関しては下(↓)のメッセージフォームまでお願いします。
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