こうのとり

2012年04月23日

2012 春の筑波宇宙センター

今年も筑波宇宙センターの一般公開に出かけて参りました。肌寒くはありましたが雨も降らずなかなかのイベント日和。天候にも助けられ昨今のJAXAのメディア露出も手伝ってか今年は例年にない人出だったように感じます。「宇宙兄弟」に絡めた小ネタも何点か見かけることが出来ました。

20120422aしきしま的な目当てはなんと言ってもHTVに再回収能力を持たせた「HTV-R」です。長いこと検討されていましたが、ようやく予算が付きプロジェクトが動き始めました。筑波の会場で見かけたのは、解説用のモックと、精巧に作り込まれた模型が一つだけという寂しいもの。ですがこれまで文字通りペーパープランでポスターの中だけの存在であったHTV-Rがようやく現実のものとして動き始めた実感があったのはとても嬉しいものです。

20120422b以前にもお話しした通りHTVは他国の干渉を受けるリスクを最小限に抑えるため、安直に輸入に頼ったりせず出来る限り自国で開発できるものは開発してその技術力と経験の蓄積を計ってきました。もちろんHTV-Rについても更に未来を見越した取り組みがなされています。HTV-Rは人間が乗ることはできませんが、それでもアポロのリエントリカプセルよりも大型の帰還モジュールを採用するなど、将来の有人宇宙船につながる意欲的な取り組みが随所に組み込まれています。調布の調布航空宇宙センターではすでにカプセル検討モデルの風洞実験や着水試験なども始まっているとのこと。

実機を目にするのはまだまだ先の話ですが、将来が楽しみな宇宙機の一つです。

---<参考>-----------------

HTV-R検討資料(pdf)
 ・宇宙ステーション補給機(HTV-R)検討状況 

HTV-R寄付金(有人宇宙船/有人打上げロケット)
   
・JAXA寄附金ホームページ

 



shikishima_ld at 16:05|PermalinkComments(0)

2011年03月01日

HTV2号機、暴露部搭載物の移設を完了


110211b HTVのドッキングに合わせての更新のつもりでしたがすっかり時機を逸してしまいました。ごきげんよう。さてあれよあれよというまにトラブルらしいトラブルも起きず順調にISSへドッキングしたHTV。今日はそのドッキングについての解説など。

・HTVは何故自動ドッキングを捨てたのか?

HTVが実証したキャプチャ・バーシング方式、それはつまり専用のドッキング機構を持たず、ISSのすぐそばを飛びながら、アームで掴んでもらうという方式。計画開始当初、NASAからして「そんなもん出来てたまるか」と言われていた技術でありました。しかしなんでまたHTVはNASAから反対されながらもその方式にこだわったのでしょうか。

これまでISSへドッキングするためにはAPASという自動ドッキングシステムが使われておりました。このAPASとはロシアが開発した信頼性の高いシステムで、無人宇宙船による自動ドッキングも可能な素晴らしいものです。スペースシャトルもこのAPASを使用しています。しかしこの素晴らしいAPASはこれはこれでデメリットもありました。まず宇宙船同士が同じ軌道を通り、緩やかながらもゴツンと宇宙船同士がぶつかり合うわけで、この衝撃型ドッキングと呼ばれる方式は潜在的に危険性があること。そして有名な「出入り口が狭いこと」

110122b対してHTVの「キャプチャバーシング方式(以下C/B方式)」は、お互いが同一軌道を飛ばないので「安全」「出入り口が広くとれる」という特徴をもっています。C/B方式の利点はコスト面にも現れます。APASの高価なドッキングシステムを使わないことで宇宙船自体のコストも押さえられますし、自動ドッキング、つまり衝撃型ドッキングを使わないということは、船体に余分な力がかからないことから船体を軽く作ることが可能となります。HTVが側面に大きな開口部を開けることが出来たのもC/B方式ならではのメリットです。

そしてもう一つ語っておかなければならないのが、技術的な独立性です。ISSへのドッキングシステムはロシアのAPASしかない。それはつまりドッキングしたければ毎回毎々ロシアにお金を払ってパテントを買わなければならず、ロシアが首を横に振れば、ISSへのドッキングが不可能となってしまうことです。ランデブードッキング技術とは宇宙活動では欠かすことの出来ない技術です。HTVではこの技術を独自開発することで、海外から干渉される可能性を減らしています。

もちろん独自開発には他にもとても良いことがあります。無人機のドッキング技術はアメリカですら持っていません。つまりISSにドッキングするにはロシアか日本のシステムを買わなければならないと言うことです。HTV1が無事にドッキングを成功させたことで、HTVのシステムがアメリカの民間宇宙船に採用され、9機分60億円の受注があったことは記憶にあたらしいです。またシステムばかりではなく、アメリカからは、有償での日本スタッフによる米宇宙船の運用支援と訓練支援も打診されています。日本では、「自分でやらなくても海外から輸入すれば云々~」という論調は見られますが、首根っこの技術を他国に依存してしまえば骨の髄までしゃぶられます。逆もまたしかり。

NASAからも頼られるほどの存在になったHTV、しかしそれは今日突然出来上がった物ではありません。HTVのドッキング技術は、97年に打上げられた技術試験衛星きく7号こと「おりひめ・ひこぼし」の経験が基礎となっています。1990年代前半にタネを蒔いた技術が芽が出て収穫するまでに15年以上かかっているのです。

 

 

 

 

 



shikishima_ld at 02:09|PermalinkComments(0)

2011年01月22日

HTV-2号機、打上げ成功。ISS到着は28日

110122 1月22日、14時37分、種子島宇宙センターから打上げられた宇宙ステーション補給機の量産1号機こと「こうのとり」2号は、打上げに成功。無事ISSへと向かう軌道に乗りました。打上げ関係者の皆様、お疲れ様でした。

また28日にはHTVの元気な顔が見られることを祈っております。



shikishima_ld at 22:11|PermalinkComments(2)

2011年01月19日

HTV-2号機、明日打上げ

2011年、本年もよろしくお願いします。

最初の更新は、もちろんHTV-2号機について。明日1月20日、宇宙ステーション補給機「HTV」2号機が種子島宇宙センターより打上げられます(「こうのとり」という愛称が付いておりますが、呼びにくいので今回はHTVで行きます)。

・【HTV2号機特設サイト】

http://www.jaxa.jp/countdown/h2bf2/index_j.html

※明日20日の打ち上げは天候不順のため延期となりました。

091024a 1:宇宙宅配HTV HTVとは国際宇宙ステーション「ISS」へ荷物を運ぶ無人の輸送船のこと。スペースシャトルと違い人は乗せられず、ISSに荷物を運び込んだあとはISSの不要物を詰め込んで大気圏に突入、破棄されます。つまり片道切符の使い捨て宅配便です。技術的に面白い特徴は色々あるのですが、基本的な解説は初号機の解説を見て頂くと良いと思います。→(昨年の記事

2:さらに安全に HTV2は昨年打ち上げられた初号機の教訓が様々に反映され、より使いやすく安全な宇宙船として仕上げられています。

今回の変更点として、まずは人が出入りできる予圧部の間取りが変更され構造がシンプルになったこと。これによりスペースが拡大しより荷物が積めるようになった。そして初号機で11台搭載されていた一次電池のうち4台を廃止。初号機では万が一に備えて多めに積まれていた推進剤を減らして適量に。これにより貨物搭載量は初号機の4.5トンから最大6tトンに増大します。H-2Bの打ち上げ能力が当初の想定を上回っていることが確認されたため、HTV全体の重量は前回よりも0.5トン重い16.5トンでの打上が可能となりました。加えてパナソニック製の宇宙用LED照明が初めて使われることにも注目です。

更に信頼性対策として、初号機でエラーが発生した誘導用ソフトウェアの改善。前回加熱が問題となった姿勢制御スラスタには前回よりも計測上限の高い温度センサへの変更。「あかつき」事故の水平展開として燃料供給ラインの再点検も行われています。

3:ミッションスケジュール 1月20日15時29分に打上げ。ISSとのドッキングは一週間後の1月28日を予定しています。ここまで日数がかかるのは、HTVの性能的なものでは無くて手続き上の問題なので、やろうと思えばシャトルやソユーズと同程度の日数でのドッキングも出来るのだそうです。ドッキング後の係留期間がシャトルの都合から、前回の43日以上に長くなりそう、とのこと(HTVの設計上の係留可能期間は30日です)。

4:今回の見所 なんといっても、2010年2月にISSに設置されたキューポラに要注目です。このキューポラとは7枚のガラスで構成されたロボットアーム観測ユニットであり、平たく言えば宇宙展望台のこと(こんな感じ→)。このキューポラから眺めるHTVはさぞかし魅力的であろうと思います。さらには、HTVの係留中にスペースシャトルまでもがドッキングすることも予定されており、この場合は、ISSに係留されているHTVを外から撮影されることになるかも知れません。またシャトルのドッキング時にはHTVがジャマになるので、ドッキングしているHTVを一回引っこ抜いて別の場所に刺したあと、シャトルをドッキングする、というミッションも予定されています。

あとはH-2B2号機は、段間部の白色(断熱)塗装が廃止されましたので、従来通りの黒いマフラーを巻いたH-2Bが出てきます。今回初めて行われる2段目エンジンのアイドル燃焼を用いた制御落下実験も注目です。

4:そして最後にライブ中継 残念ながらJAXA-iは閉鎖されてしまいましたが、パブリックビューイングは無くなりません。ネット上での生中継も行われますので、お時間に余裕がある方は是非是非パソコンの前に。・・・島の天気がいまいち不安定なのが気になります・・・。

・打上げライブ中継、パブリックビューイングなど
 http://iss.jaxa.jp/htv/mission/htv-2/library/live/

HTVは書き出すとネタがいっぱいあるのですが、自重しておかないと同人誌のネタがなくなってしまうので本日はここまで。次回は「HTVは何故自動ドッキングを捨てたのか」について書いてみたいと思います。

最後となりましたがHTV2号機の打上げ成功を心よりお祈り申し上げます。それではノシ



shikishima_ld at 10:13|PermalinkComments(0)

2009年10月26日

おめでとうHTV

091026
不景気な話ばかりの昨今ではありますがおめでたいニュースが飛び込んできました。三菱電機さんが米オービタルサイエンス社から、NASAの宇宙貨物輸送機用近傍接近システムを受注との報せ。大変素晴らしい。
平たく言うと、HTVがISSにドッキングするさいに使われている通信システムがアメリカの次世代宇宙輸送機にも使われることになった、というニュースです。9機分約60億円とのこと。

日本の宇宙開発における重大な欠点(の一つ)、それは「もうからない」こと。民間にて超小型衛星なんてものが出てきても、実際に衛星やロケットを発注してくれるのは政府機関だけ。その数も衛星が1年に1~2機のペース。いくらお客様とはいえ、製造にもの凄い手間のかかる宇宙用の高級部品を年に1個とか発注されても、それは会社の規模によっては、まったくメリットのない取引です(むしろ赤字)。現実に宇宙開発なんかやってられるか!と脱退してしまうメーカが増えており、これは現在、深刻な問題であるのです。

それでもここ数年、これまで培ってきたノウハウが認められ、海外から日本製宇宙部品/衛星がようやっと売れるようになってきましたが、中でも今回のHTV近傍接近システムの受注は大きな意味のある取引だと思います。HTVのドッキングシステムというのは現在実用化されてるISSドッキングシステムの中で、(アメリカですら持っていない)唯一のロシアと別系統のシステム。商売的にこれは大変大きいカードであるのですから。

さて、当のHTV初号機は10月30日にISSより分離、11月初旬に大気圏に突入するとのこと。当然日本からは見ることが出来ませんが、せめて中継してくれることを願うばかりです。



shikishima_ld at 20:56|PermalinkComments(6)TrackBack(0)
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