準天頂衛星初号機「みちびき」

2010年09月27日

ぼく達の頭上にぼく達のホシを

100921  なんとなく描いていた落書きが仕上がったタイミングで準天頂衛星初号機「みちびき」が準天頂軌道に投入されたとのニュースが入ってきました。いよいよ衛星として独り立ちですね。おめでとう。

「みちびき」が打上げられたのは9月11日。2週間かけてようやく自分の軌道に入ったことになります。例えば「いぶき」や「だいち」、その他偵察衛星など、地球を観測する衛星は高度数百キロという低い軌道を飛びます。この場合、ロケットで直接その軌道に送り届けてくれます。一方で気象衛星や「みちびき」のような高あああい軌道(高度数万キロ)の場合、ロケットだけでは持ち上げることができず、衛星自体がえっちらおっちら昇って行かなくてはならないのです。と、いうわけで今日から「みちびき」は一日のうち約8時間、日本の何となく真上に位置し、今後10年間にわたり我々を見守り続けてくれることになります。

準天頂衛星「みちびき」の話。・・・とはいったものの、この衛星を説明するのはなかなかに難しいです。一言で言えば「みちびき」は日本の真上に位置する日本専用のGPS衛星。いやいやこの呼び方は誤解を呼ぶな。常に日本の上空に位置しアメリカのGPS衛星だけでは不足がちな信号を補うための補強/補完信号を出してくれるありがたい衛星とでもいえばいいのか。

※GPS補完:米GPS衛星と同じ信号を出すことで、
                   国内の利用時間利用エリアを拡大させること。
 
※GPS補強:米GPS衛星の信号に誤差情報を乗せて、GPSを
                   より高い精度で使うこと。

この「みちびき」の良いところとよく言われるのが「カーナビの精度が良くなる」ですね。実際はそんな単純なものでは無く、正確に言えば「これまでよりも一桁上の精度で自分の位置を調べられるようになる」ということです。この恩恵ははかりしれません。これまでカーナビレベルの精度では使えなかった産業にも衛星測位が使えるようになるのですから。例えばロボットによる自動運転(輸送カートやトラクター)。ロボットによる海洋探査、海底地震計などの防災用途から、はてや迷子札や携帯ナビまで多岐にわたります。将来はガスや水道と同じようなインフラとして整備されることが望まれます。

もう一つ重要なのが「電波の届かなかった所にも電波が届く」です。都市部はともかくとして山間部でのGPS受信の可否はそれこそ命を左右します。

ただし問題もないわけではありません。24時間運用するには「みちびき」が三機必要であり、その為には多額のコストがかかります。このシステムは日本だけでなくアジアやオーストラリアにも恩恵があるのですが、これらの国を安全保障の一環として抱き込めるのか、多額の費用をかけて作ったシステムに民間業者が商売として一緒に付いてきてくれるのか。国家の生命線として高いコストを払って維持していく覚悟があるのか。これらはハードでなく政治の話になりますが、むしろこれらについて明確な見通しが組めないのであれば、準天頂衛星システムを整備するべきではないでしょう。

すでに報道にあるように、「みちびき」は3機必要ですが2号機以降はまだ未定です。将来3姉妹が揃うかどうかは、お姉ちゃんのがんばり次第です。

まとめます。

--【準天頂衛星まとめ】--------------------------------------

・これまでの一桁上の精度での測位が出来る(GPS補強)。
・これまでよりも広いエリアでの測位が出来る(GPS補完)。
・米GPS衛星と併用してはじめて効果を発揮できる。
・24時間使うには3機が必要。

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100927  と、普段報道されていることの引き写しだけではつまらないので、もう少し主観の入った話をちょっとだけ。この子、誰かに似ていませんか?実は「みちびき」は気象衛星「ひまわり7号」の姉妹なのです(「かぐや」と答えた人は残念ながらボッシュートです)。

三菱電機の誇る衛星バス「DS-2000」が「みちびき」のプラットフォーム(車のシャーシ、パソコンのケースみたいな物)であり、この衛星バスは「きく8号」を基礎に発展を遂げてきた、日本では珍しい量産されている衛星(かつ海外に売れた唯一の衛星)であります。姉妹とちょっと違うのが太陽電池パドルが左右に分けられて二翼式になったこと。これはたとえ太陽電池が死んだとしても、残った片翼でミッションを継続できるようにとの配慮から(電源系の完全二重化)。他にも「はやぶさ」と同様にリチウムイオンバッテリーを搭載するようになったりと、細かいところで改良されているようです。

DS-2000は「みちびき」を含めて現在で4機、ひまわり8+9号での受注も内定しているので、将来は7人姉妹になる予定です。このDS-2000には聞くも涙、語るも涙の日本の宇宙開発史に残るお話しがあるのですが、いつか取材できる日が来たら是非描きたいです。

なんか久しぶりに書いたらやったら長くなりました。
 今日はこれにて~ノシ



shikishima_ld at 17:16|PermalinkComments(5)
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